イタリアワイン法による分類

イタリアワイン法による分類
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 ロッソ(ROSSO)、ビアンコ(BIANCO)と見た目による分類や、トスカーナ産、ピエモンテ産などの生産地による分類など、ワインは色々な角度から分類することが出来ますが、ここでは法的な表示上の分類を紹介してみたいと思います。
 イタリアのワイン法を見てみると、ワインは法的にDOCG、DOC、IGT、VdTという四つの分類に分けられています。この文字だけを見たのでは、何がなんだかわからないと思いますので、それぞれの説明を試みてみます。

DOCGとDOC
 先ずは、ちょっとその呼び名も似ているDOCGとDOCについて触れていきます。DOCGは「Denominazione di Origine Controllata e Garantita」の、DOCは「Denominazione di Origine Controllata」の頭文字をとったもので、それぞれ「統制保証原産地呼称」と「統制原産地呼称」と日本語には訳されています。もう少し詳しく説明すると、DOCGとDOCワインは以下のような条件を満たしていなければならないのです。

  1. 原料ぶどうの産地が指定されている土地のものであること。
  2. 原料ぶどうの品種、および、混醸する場合は決められたぶどう品種を使い、それぞれのぶどう品種ごとの混合比率が決められた割合を満たしていること。
  3. DOCG及びDOCワインを作るためのぶどうを栽培する畑であると、届け出られている畑であること。
  4. 決められた方法で醸造されていること。
  5. 決められた熟成の方法を用いて、決められた法定熟成期間を満たしていること。
  6. アルコール度などワインの化学的成分分析が、規定の条件を満たしていること。
  7. 色、香り、風味などワインの質的な特性が、当てはまるDOCG及びDOCワインの力量を満たしていること。

 これらの条件を全て満たすことが、DOCGおよびDOCワインを名乗るための必要条件なのです。これだけの厳しい条件を満たした上で、初めて認定を受けるわけですから、いわばイタリアワインにおけるサラブレッド的存在なのです。
  DOCGとなるためにはDOCよりも更に厳しい国による検査が行われ、この検査に合格して初めてDOCGを名乗ることが許されるのです。つまりDOCGワインはサラブレッド中のサラブレッドといえるでしょう。2004年4月現在でこのDOCGワインは以下の表にまとめるように30種類のみが認定されています。因みにDOCワインは300種類もの銘柄が登録されています。DOCの登録数と比較しても、DOCGが特別なものであることがわかるでしょう。

Piemonte
(ピエモンテ)
Barbaresco(バルバレスコ)
Barolo(バローロ)
Gattinara(ガッティナーラ)
Asti(アスティ)・Asti Spumante(アスティ・スプマンテ)
Moscato d'Asti(モスカート・ダスティ)
Brachetto d'Aqui(ブラケット・ダックィ)
Ghemme(ゲンメ)
Gavi(ガヴィ)
Lombardia
(ロンバルディア)
Franciacorta(フランチャコルタ)
Valtellina Superiore(ヴァルテッリーナ・スペリオーレ)
Valtellina Sforzato(ヴァルテッリーナ・スフォルザート)
Veneto
(ヴェネト)
Recioto di Soave(レチョート・ディ・ソアベ)
Soave Superiore(ソアベ・スペリオーレ)
Bardolino Superiore(バルドリーノ・スペリオーレ)
Friuli-Venezia Giulia
(フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア)
Ramandolo(ラマンドロ)
Emilia-Romagna
(エミリア・ロマーニャ)
Arbana di Romagna(アルバーナ・ディ・ロマーニャ)
Toscana
(トスカーナ)
Brunello di Montalcino(ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ)
Vino Nobile di Montalciano(ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ)
Chianti Classico(キヤンティ・クラッシコ)
Chianti(キヤンティ)各種
Carmignano Rosso(カルミニャーノ・ロッソ)
Vernaccia di San Gimignano(ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ)
Umbria
(ウンブリア)
Torgiano Rosso Riserva(トルジャーノ・ロッソ・リゼルバ)
Sagrantino di Montefalco(サグランティーノ・ディ・モンテファルコ)
Marche
(マルケ)
Vernaccia di Serrapetrona Spumante(ヴェルナッチァ・ディ・セッラペトローナ・スプマンテ)
Abruzzo
(アブルッツォ)
Montepulciano d'Abruzzo Colline Teramane(モンテプルチャーノ・ダブルッツォ・コッリーネ・テラマーネ)
Campania
(カンパーニア)
Taurasi(タウラージ)
Fiano di Avellino(フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ)
Greco di Tufo(グレコ・ディ・トゥーフォ)
Sardegna
(サルデーニャ)
Vermentino di Gallura(ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ)

 上記のDOCGワインには、ワインボトルの首の部分に、赤ワインであればピンク色・白ワインであれば黄緑色の交付されたシールを貼ることが出来ます。DOCGワインを探すときはこれらのラベルを目印にすると見つけやすいですね。

IGTとVdT
 IGTは「Indicazione Geografica Tipica」の、VdTは「Vino da Tavola」の頭文字を取ったものです。VdTはヴィーノ・ダ・ターボラ、いわゆるテーブルワインのことです。ですから特に法的な規制はなく、その多くは安価なデイリーワインを表しています(まあ後で説明する例外的なものも含まれていますが)。そしてインディカツィオーネ・ゲオグラフィカ・ティピカは、以前はDOSなどと呼ばれていたものを90年代初頭にVdTの中でも上級のクラスとして新しく作ったものです。その地方の伝統あるぶどう畑のぶどうを原料として、その地方の昔からの醸造方法で作られたワインのことで、まあDOCGとDOCの廉価版と考えて良いでしょう。

 この法的な分類を理解することで、ワインを俯瞰的に見たときの、DOCGを頂点としてVdTを底辺としたピラミッド構造のヒエラルキーを捉えることができるので、ワインのランクというか格付けのようなものを大まかに理解することができるようになります。
 ただし、ちょっと複雑なのがこの法的な分類の上位に位置するワインが、他の全ての分類のワインよりもうまかったり評価が高かったりするかというと、どうやらそうとも言い切れない点です。現在世界のワインマーケットにおいて、ヒエラルキーのトップであるDOCGワインではないにも関わらず非常に高価・高評価で流通しているワインがあります。これらを非公式にスーペル・ヴィーノ・ダ・ターボラ(Super VdT)などとよんでいます。

Super VdT
 DOCGの規制にとらわれずに自由に高品質のワインを作りたい、という生産者の試みによって、法的な分類で見ると最下位に属するVdTにも関わらず非常に高品質のワインが作られるようになりました。もともとはトスカーナでこのような試みが始まり、広まっていきました。これに目を付けたアメリカのワイン愛好家達が、これのワインをスーパー・タスカンと総称して呼ぶようになり、これが変化して「スーペル・トスカーナ」というような名称で呼ばれることとなりました。そしてこれらがイタリア各地に広がっていく中で、総称してスーペル・ヴィーノ・ダ・ターボラという分類が生まれてきました。ちなみにこれらSuper VdT、スーペルトスカーナの源流となったのは、Sassicaia(サッシカイア)。ボルドー系のワインが好きだった生産者が、自分たちでの飲むために作ったのが始まりだったそうです。つまり、それまで常識だったサンジョベーゼ種とイタリア種のぶどうで作るということをやめて、サンジョベーゼとフランス種のカベルネ・ソーヴィニオンで作ったのです。その他の代表的なスーペルトスカーナは、ソライア(Solaia)、オルネッライア(Ornellaia)などをあげることが出来ます(もちろんまだまだ沢山あります)。これらのSuper VdTの特徴として、外国産のぶどう品種を多い割合で利用しており、ボルドーっぽいワインに仕上げている点をあげることが出来ます。またSuper VdTといえる銘柄でも、イタリア種のぶどうだけを使ったものなどもあり、結果的にイタリアワイン全体の品質向上に貢献しているようです。Super VdTがイタリアワインに与えた影響は大きく、バローロやブルネッロ・ディ・モンタルチーノなどと並んで、とても高価でワインマーケットに流通しています。

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