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トーディ
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Todi

 自然豊かなウンブリアの緑濃い風景を眺めながら山道をすすむと、心地よい風を伴った木漏れ日が、急に強い日差しに変わり、丘の上に建設された小さな町トーディがその姿を現します。ウンブリアの他の町と同様に、トーディもまた丘陵地の上に建設された町なのです。
 町の起源は古く、古代ウンブリア人の手によるものだったそうです。そしてこの町が、隣国を治めていたエトルリア人の領地との境に位置していたという事が、この町の名前の由来となっているそうです。つまり、境界を意味する「トゥデル(tuder)」が、トーディの語源であったという事らしいのです。
 ウンブリアの起源を持つこの町も、その後、エトルリア、ローマ、教皇領と、様々な支配を経験しました。その支配という状況下にあっても、中世には都市国家的な政治により自治が行われ、見事な黄金期を迎えました。町の中心には、その時に建築された様々な建物が残っていますし、また中世に建設され、現在でも町を囲む城壁を見ることが出来るために、これらの建設物を見ると、当時の繁栄を思いめぐらせることができます。

■トーディへの行き方
 鉄道で行くのであれば、ペルージア-テルニ間のローカル路線に乗り換え、トーディ・ポンテ・リオ(Todi Ponte Rio)という駅が最寄り駅になります。駅から町まではバスやタクシーの利用になります。バスの場合は、ペルージアもしくはテルニからの利用になります。車でのアクセスを考えても、高速道路フィレンツェ−ローマ間"A1"のオルビエートをおりてから一般道をすすんだり、ペルージアから準高速を利用する事もできます。
 様々な手段を考えることが出来るので、アクセス条件に恵まれているとまでは言えませんが、それ程悪くないのも事実です。ペルージアやテルニ辺りをベースにすれば、公共交通機関を利用しても、十分に日帰りは可能です。ただし、フィレンツェやローマ辺りからの日帰りはちょっと大変かも知れません。特に電車の利用となる場合は、時刻表を前もって調べて計画を立てることが必要になるでしょう。
 車を利用する場合は、大変でも城壁の外に駐車した方が無難でしょう。駐車スペースが広いので停めやすいです。確かに中心部にも駐車場はありますが、駐車スペースが限られているために、停められないこともありますので。それに町自体小さいので、せっかく来たのですから、町中くらいは歩いて廻りたいものです。

■トーディの見どころ
 トーディは町自体が小さいために、徒歩でも半日もかからずにまわれてしまうほどです。そんな小さな町の見どころは、その見方次第とも言えるでしょう。町の雰囲気を感じながら、代表的な建造物を見るのもよし、町全体の雰囲気に浸りきって、ゆっくりと時間の流れを町に委ねてしまうのもよし、トーディはそんな自分の都合で色々な見方が出来るような町なのです。
 町を見るのは徒歩が中心となり、町自体が丘の頂上に建設されていることを考えると、歩き回りたいと思ったら歩きやすい服装をすることをおすすめします。町の中心部分だけを歩いている分には、それ程き大変でもありませんが、城壁から町の中心部に向かって歩く時は、坂をひたすら上らなければならないので大変ですから。

町の中心、ポポロ広場
 町の中で、最も高いところに位置しているのがポポロ広場(Piazza del Popolo)です。この広場は、ローマ帝国時代にフォロ(公共広場)に始まり、現在でもドゥオモや市庁舎が広場の周りを囲んでいることからもわかるように、政治的にも、宗教的にも歴史を通じて町の中心であり続けています。そのために、広場の周囲にはこの町の重要な建築がひしめいています。

信仰の中心、ドゥオモ
 広場の北側に面しているのが、この町の信仰の中心ドゥオモです。このドゥオモは、12世紀に建立されたもので、広場よりも一段高く階段の上に建てられているために、空間的な遠近感が強調されて、他の建物と比較した時に奥深さを感じる大きな建築物に感じられます。宗教的に、このような意図があって建設されたのだとしたら、見事に成功しているな!っといった感じでしょうか。広場に面したファザードは、周りの建築物とは明らかに異なる色調をしており、その明るく白い色合いが、一層このドゥオモの存在感を引き立たせているようにも感じます。冷たい感じすら受ける町全体を支配する石の色と違い、質素ながら清らかさを感じるように仕上がっています。
 ファザードは、尖塔形ではなく長方形をしていて、そこに三つのバラ窓があり、真ん中上部のものが、質素に飾られたファザードのアクセントとなっているように感じます。まぁ、色彩的に質素に見えるとはいえ、扉口に施された浮彫はとても見事です。

政治の中心、ポポロ館・カピターノ館
 続いて広場の、東に面しているのが、現在のこの町の政治の中心ポポロ館(Palazzo del Popolo)・カピターノ館(Palazzo del Capitano)です。両方の建物共に、トーディが黄金期を迎えていた13世紀に建てられたもので、特にポポロ館はイタリアで最も古い市庁舎の一つに数えられています。
 二つの建物は外階段でつながれていて、共に一階部分は柱廊となっているので、薄暗いながらも人が自由に歩ける構造となっており、建物自体のユニークさを感じます。現在は、両者とも市庁舎として使われています。ただ、一部分が絵画館として利用されていたりします。

商いの中心、プリオリ館
 広場の南に面しているのが、プリオリ館(Palazzo dei Priori)です。もともとの建築当初の姿は、向かって正面入口から左側の部分で、1334年の建造でした。その後14世紀半ばに、当時右側にあった建物を買い取って拡張し、14世紀末に塔が作られ、1514年にはファザードが付け加えられ、現在のような建物の姿になったという、拡張の歴史を持った建物なのです。日本からすると、このような建て増しの建物というのは珍しいですよね。これも石造建築と木造建築の差と言えるでしょう。
 プリオリ館周辺は、現在でも多くの店が軒を連ね、町で一番賑やかなところであるとも言えるでしょう。

未完の教会、サン・フォルトゥナート教会
 ポポロ広場から、プリオリ館の脇を通って、しばらく道なりに進むとサン・フォルトゥナート教会(Chiesa di San Fortunato)が見えてきます。教会の全面の広場は、緑と階段によって構成されており、緑の丘のようになっています。そして、その緑の丘の上に建物が建っているという、珍しい教会です。
 正面から見て先ず目に付くのは、ファザードがちょうど真ん中の部分から上下に分かれているように見えることです。これは、上部が未完成のまま残されてしまったために、荒々しい石が露出する上部と、なめらかに完成された下部とに分かれてしまったからです。ファザードが未完成の教会も珍しいですが、一部だけが未完成の教会というのももっと珍しいのではないでしょうか。正面広場との空間の使い方といい、未完のファザードといい珍しいことずくめの教会です。
 ファザードから見て左後方には、鐘楼が建っています。この鐘楼、正面から見るとそれ程目立たない鐘楼ですが、教会自体が高台にあるために、町の南側の城壁の方からはとっても良く見え、まるで町のシンボルのようです。

ウンブリアの街並みを堪能する
 トーディの町も、他のウンブリアの町と同じように、起伏が激しく細く曲がりくねった道が多く、更に建物も道も全て石造りで、町全体が落ち着いた質感となっています。またウンブリアの町のアクセントとして、様々な町で見ることが出来る建物と建物の間の小さなアーチを、ここトーディでも至る所で見ることが出来ます。ウンブリアの町に共通するアクセントとして、アーチだけでなく、町中にある古い城門もここトーディで見ることが出来ます。決して優美とは言うことが出来ないですが、シンプルで無骨、質実剛健な感じの門を見て廻るのも良いかも知れません。
 また、町が丘の上にあるために、建物と建物の間からウンブリアの豊かな自然を眺めることも出来るので、楽しさは町の中だけに留まりません。気を付ければ気を付けただけ町の魅力が溢れ出てくるような感じすらします。全く気が抜けませんね。

町を囲む城壁
 町の周りは、13世紀に築かれた中世の城壁が囲っています。特に、ヌオーヴァ門(Porta Nuova)からアメリーナ門、サンタ・マリア・デッラ・コンソラツィオーネ教会(Chiesa di Santa Maria della Consolazione)にかけては、保存の良い状態で残っている城壁の一部を見ることが出来ます(2001年の時点で、修復をしていたので、更に良い状態で見ることが出来るようになるでしょう)。
 この城壁の外側、町の南西方向にポツンと建っているのは、サンタ・マリア・デッラ・コンソラツィオーネ教会です。この教会が建築された時代、トーディの町はローマ教皇領の完全な影響下に置かれており、町の黄金期は過ぎ去った時期でした。そのためか、というよりはそのような要因とは全く関係ないところで、この教会はトーディの町にあってかなり異質な建築となっています。ギリシャ十字のプランを採用しているために対照的な外観を持ち、独特の丸みを帯びたフォルムにより、とても調和取れた印象を与えます。また、青みかかったドーム型のクーポラがとても特徴的で、全体的に優しい感じがし、周りのウンブリアの豊かな緑と調和しており、とても美しい。
 この教会は、建築家ブラマンテによって設計されたものとされており、1508年に着工され1617年に完成と小さいながら100年以上の歳月を費やして建設されています。その間、バルダッサーレ・ペルッツィやヴィニョーラ、ミケーレ・サンミケーリらの建築家が参加しているとのことです。

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