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エリチェの町は、シチリア島の北西の端、サン・ジュリアーノ山の頂上に建てられた町です。その昔は、エミリ人の都市で、聖なる土地であったそうです。その後も、フェニキア人がアスタルテ女神に、ギリシア人がアフロディテ女神に、ローマ人がヴィーナスにといったように、それぞれの国で崇められていた生殖の女神や航海の守護女神に対して、エリチェの町は捧げ続けられており、いくつもの時代において聖なる都市として位置付けられていました。
現在の町は、相変わらず周囲に集落が出来ていないために、人里離れた山のてっぺんにあり、車も少なくとても静かな町となっています。また標高751mの山頂に位置しているため、夏でも信じられないほど涼しく、下界とは別世界です。本当にここはシチリア?と思ってしまうほどの涼しさに、訪れた人はビックリするはずです。この夏における涼しさと、素晴らしいパノラマという点から、シチリアにおける避暑地として知られています。
エリチェの町自体は山頂に建てられており、町の周囲を城壁に囲まれているために、とてもこじんまりとした町で、見てまわるには徒歩が一番でしょう。ただし小さいとはいっても、山の上に建てられた町なのでアップダウンが多少厳しいかも知れませんが、あまり歩きにくい格好は控えておいた方が無難でしょう。まぁ、人混みもないので、ゆっくりとのんびりと、町の雰囲気を感じとったり、眼下に広がる町や海の景色を眺めながら、歩いてまわりたいものです。 町の中心部 ヴィットリオ・エマヌエーレ大通り(Corso Vittorio Emanuere)は、古代には「王の道」と呼ばれていました。現在でも、町の入口トラパニ門とウンベルト一世広場の間を結ぶ、目抜き通りで、通り沿いには中世の建物が建っていたり、ホテルや土産店が点在していたりしており、エリチェの町の中心部となっています。 また、大通りの近くに建つマトリーチェ教会、サンティッシモ・サルヴァトーレ教会や、ウンベルト一世広場に面して建つ美術館などが、町の中心部の見どころとしてあげられるでしょう。 バリオ公園とその周辺 町の南東部で、最も標高が高いところで、古代の町のアクロポリス跡にあたる場所に、19世紀に作られたイギリス式庭園のバリオ公園(Giardino del Balio)があります。公園内には、植えられている木々が作り出す木陰が随所にあり、町の人の憩いの場となっていたり、観光客の休息所となっています。またこの公園には二つの城が建っており、ただの庭園ではなく、遺跡的な側面も併せて持っているのです。 公園内に建つ一つの城は、塔を備えたペポリ城(castello Pepoli)です。かつては、ノルマン朝の長官邸だったそうなのですが、19世紀に改築されて現在の邸館の姿となったのです。 もう一つの城は、ペポリ城を更に進んだところ、小山の上にちょこんと建っているヴィーナスの城(castello di Venere)です。この城は12〜13世紀にかけて、古代の建材を一部利用して建築された城で、内部には、エリチーナのヴィーナスの神殿、聖なる井戸、ローマ時代の浴場跡などが、確認されています。 ヴィーナスの城は、エリチェの町の中で、最も高い場所に作られているので、トラーパニの町やその南に広がる塩田、コファーノ山とボナジーア湾、ペポリ城と崖っぷちのサン・ジョヴァンニ・バッティスタ教会など、眼下に素晴らしい眺望を楽しめる、絶好の場所と言うことが出来ます。条件さえ良ければ、トラーパニの先には2002年のFIFAワールドカップで日本で知名度が一気に上がったアフリカ大陸のチュニジアが望めるはずです。 さて、われわれがヴィーナスの城を訪れた時、城の入口には管理しているおじさん(自称)がいて色々と話しかけてきました。そして入るにあたってチップを要求されました。本来入場料はないので、チップを渡すか渡さないかは、皆さんの気持ち次第、というところでしょうか。 パリオ公園のすぐそばには、ヴィーナスの城からも見えた、崖の上に建つサン・ジョヴァンニ・バッティスタ教会があります。 |